用語集
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The Apostles | 使徒会 | ケンブリッジ大学に存在する秘密の学生団体。1820年に創設され、何らかの分野において優れている人物が会員になる権利を得られるとされている。『使徒会』の名は設立メンバーの数が12名だったことに由来する。学生のメンバーは「使徒」、卒業生の元メンバーは「天使」と呼ばれる。メンバーはセント・ジョンズ、トリニティ、キングスの学生が多い。新会員の決定は全会一致でなければならず、候補者は招待されるまで自身が候補に挙げられていることを知らない。入会の際には組織の歴史と伝統についての簡単な説明を受け、「ザ・ブック」(全てのメンバーの署名や会員規則、討論会の原稿等が収められた革製の日記帳)に署名し、誓いの儀式をする。毎年約1〜2名が入会していると言われている。 主な活動内容は小規模のディスカッションで、真実、神、倫理等を議題に討論をする。毎週土曜の夜に当番の講演者の部屋でミーティングが行われ、講演者は「クジラ」と呼ばれる軽食(サーディントースト)とコーヒーを提供する。講演者は決められたトピックに関する論文を発表し、議論が行われ、質問の投票がなされる。投票の直後に次回のトピックの決定と講演者の抽選が行われる。 数年に一度、「使徒」がすべての「天使」たちを招待する秘密の食事会がケンブリッジやロンドンで開催されている。 |
Assistant Master | 助教師 | 校長によって任命される。オックスフォードかケンブリッジの卒業生であることが条件。主な任務は、学級担任教師となること。寮(大寮あるいは小寮)の寮教師となること。個人指導教師となること。聖職位を持っている場合は礼拝で奉仕し、説教を分担すること。規則違反を取り締まり、必要があれば罰を課し、校長に報告すること等である。 |
Assistant Master | 校長付き助教師 | 学級担任は無く、主に校長の補佐としての役目を担う。校長の受け持つ6年上級の生徒を同様に指導する。現在30名いる6年上級の生徒のうち、上位10名の個人指導を校長が、下位20名を校長付き助教師が担当している。校長付き助教師が行う学習指導はこの個人指導が大半を占めており、週5回(計10時間半)の指導時間がある。一斉授業は週に1時間あるのみ。それ以外の仕事内容は通常の助教師と同様。現在はウェストコットが担当。 |
Bill | 点呼 | 各寮で毎日三回実施される。コールオーバー (Call-over) とも。 |
Bill book | 台帳 | 生徒の出欠記録や懲罰履歴などを記すために教師が用いる、青い表紙が特徴の小さな本。 |
Chancellor's Gold Medal | 総長金賞 | ケンブリッジ大学において権威ある詩の賞とされる。受賞は非常に名誉なことである。 毎年、発表されたテーマに沿った詩を匿名で提出。受賞者は評議員議事堂で詩を朗読することができる。金のメダリオンが贈呈され、表と裏に著名な詩人や女王の肖像が描かれている。 |
Confirmation | 堅信礼 | キリスト教の儀式のひとつ。幼児洗礼は両親によって受けさせられるものであるため、本人の信仰心や意志によるものではない。したがって、成人した本人が信仰告白(信仰心の確認)を行い、教会の正会員となるための儀式が堅信礼である。キリスト教の良き信者育成を目的としている学校において、堅信礼は最も重要な行事である。 ロクセス校では16歳以上の生徒を対象に、2年に1回司教を招いて学校礼拝堂で実施している。この堅信礼のために教師たちは日々の授業・礼拝・行事を通して準備教育を行う。候補者には特別教育や校長による説教・個人面接などが課される。 |
Deacon | 執事 | 司祭の補佐をする聖職者のこと。特定の教区に通常3年間任命される。2年目で司祭職の訓練を受け、執事から司祭となる。司祭になる者もいれば執事職のままの者もいる。任期契約が更新または終了するまで同じ教区での奉仕を継続する。執事は聖体拝領の儀式を主宰する権限を持たず、司祭のみが行うことができる。 |
Doctor of Divinity | 名誉神学博士 | 略称は『D.D.』。英国の大学において様々な分野の博士号の上に位置付けられている最高位の博士号とされる。キリスト教会へ多大な貢献をし、地位と能力ある宗教学者に授与される。神学博士 (Doctor of Theology) とは異なる。 |
Ducker | 水泳場 | ロクセス校のスイミング・プールの俗称。 |
Fag | 当番下級生 | 下級生が上級生の下に付き、雑用を行う制度。特定の上級生に当てることで下級生をいじめなどから守る保護策でもある。 6年級の全員が当番下級生を持つことができ、対象は5年級以下の全員。最下級生の3年級と、既に3年間当番下級生を務めた者は除く。仕事内容は朝食やお茶の用意とその片付け、クリケット中の球拾いなど。 |
Fellow | 特別研究員 | 研究費を支給される大学院生や教師のこと。資金のほか、学寮での居住と食事を保証されるが、その権利を得るには独身である必要がある。 |
Fives | ファイヴズ | 球技の一種。四方を壁に囲まれたコートを使い、壁に当てたボールを素手(あるいはグローブを着用した手)で交互に打ち返していくというもの。古くは教会の建物の壁を使ってプレーされており、『ファイヴズ』の名は五本指を使うことに由来するといわれている。 |
Fourth form room | 四年級部屋 | ロクセス校の中でも特に古く、神聖な場所とされている教室。かつてはここで4つの学年の一斉授業をしていたことからこの名で呼ばれている。ロクセスに自身の軌跡を残そうと、壁にはオールド・ロクソニアンたちの名前の落書きが一面に刻まれている。ロクセス校の歴史を体現する教室である。現在は4年1級を受け持つスミスとその生徒たちが授業で使用している。 |
Foundationer | 奨学生 | 学費免除の特典を受けられる生徒のこと。教区内に居住している両親が、子供の奨学生の希望を管理委員会に提出できる。居住期間は関係ない。主要科目(古典、数学、現代外国語)の授業料全額、校費の半額が免除され、負担するのは個人指導教師の月謝、入浴費、校費の半額のみである。定員は40名で、これは開校当時の生徒数に因む。 |
Foreigner | 自費生 | 遠方から入学した外来生徒のこと。学費免除の特典を受けられる奨学生とは違い、学費を全額負担するため自費生と呼ばれる。 |
Free School | 無月謝学校 | 学校が基本財産を持ち、教区内の子供や貧しい家庭の子供を学費無料で教育する学校のこと。当初はロクセス校も地元の男子のための無月謝学校として創立されたが、学費をとることで教区外の子供(自費生)たちも通えるようになった。現在の奨学生制度は無月謝学校の名残である。 |
Half holiday | 半休日 | 午後の授業が無い日のこと。ロクセス校では火・木・土の週3日を半休日としている。半休日の午後にはスポーツが充てられる。希望者は非常勤講師を招いての課外授業を受けることもできる。 |
Head Boy | 寮代表 | 寮の代表生徒。監督生の中でも更に代表となる生徒。各寮に1名ずつ、寮教師によって任命される。毎週校長が開くお茶会に招待され、そこで校長や副校長と面会を行い、寮の状況報告等をする。 |
Head Master | 校長 | 管理委員会によって任命される。独立学校における校長の権力と影響力は非常に大きく、校長の方針が校風を左右すると言ってもよい。全生徒の教授と訓育、礼拝堂行事の運営、全助教師の任免、寮の開設の許可権と寮生数の決定権全般についての責任をもっている。問題が起こった場合には校長がその全責任を負うこととなる。最上級生(監督生と6年上級)は校長が担当する学級であり(数学と現代外国語以外の)全ての授業を担当する。 |
House | 寮 | 生徒たち、寮教師とその妻子、寮母が居住する家。建物は学校周辺に点在している。当初、地元民のために創立されたロクセス校には遠方からやってきた自費生の居住場所が無く、宿泊施設が必要になったことが寮発達の経緯である。 |
House Master | 寮教師 | 寮に生徒たちと共に居住し、その管理をする助教師のこと。寮監、舎監とも。入学前に父母との相談によって寮教師を決定し、その寮に生徒が所属する。聖職位を持つ者は最適任とされ、優先的に寮教師を担当する。寮教師が古典担当の助教師である場合には個人指導教師も兼任する。 |
Independent School | 独立学校 | 公費の支援を受けず、学校財産収入と生徒の学費収入で経営され、独立した管理委員会が管理している学校のこと。私立学校とも。この独立学校の中でも特に歴史、権威、財産を持つものがパブリック・スクールと呼ばれる。 |
Major | メジャー | 兄弟の兄を指す際に用いられる呼称。兄弟が同一の学校に通っている場合、姓の前に付けて呼ばれる。 例:メジャー・バトラー |
Matron | 寮母 | 寮で生徒たちの世話をする女性のこと。必ずしも寮教師の妻とは限らない。 |
Minor | マイナー | 兄弟の弟を指す際に用いられる呼称。兄弟が同一の学校に通っている場合、姓の前に付けて呼ばれる。 例:マイナー・バトラー |
Monitor | 監督生 | 生徒の監督は生徒に務めさせることが最も効果的であるという考えのもと生まれた自治制度。最上級生の中から特に知力・体力・人格に優れた者15名が校長によって任命される。監督生の懲戒権は(5年1級と5年2級を除く)全ての生徒に及び、特別の権限を与えることで相応の責任感も持たせることができるのである。 主な任務は、寮教師をサポートすること。校則違反を取り締まり、校内・寮内の秩序を守ること。スポーツでは進んでリーダーを務めること。下級生の保護をすること、などである。問題は校長に相談の上で監督生が解決することが望ましいが、大きな問題の場合には校長に委ねることもある。 |
Philistine | ペリシテ人 | 3000年前に存在したといわれる古代民族。イスラエル人と対立し、カナンの南海岸を占領していた。彼らの住む地が『パレスチナ』と呼ばれることになる。ペリシテ人という語は「知的・美術的価値、特定の分野の知識がない人」の比喩として用いられることがある。 |
Preparatory school | 準備学校 | 主にパブリック・スクールに入学することを目的とした準備教育を行う学校のこと。略してプレップ・スクールと呼ぶこともある。 |
Public School | パブリック・スクール | 英国における私立中等学校のこと。独立学校の中でも特に資産を持ち、長く経営を続けてきた歴史のあるものが「パブリック・スクール」と呼ばれる。パブリック・スクールと定義された学校は24校あるとされ、その中でもイートン校やラグビー校、ウィンチェスター校を始めとする9大校が特に著名で権威ある学校とされる。多くは寄宿制だが通学制の学校も存在する。 私立校がPublicと呼ばれる所以は諸説ある。それまで中心であった「家庭教師による教育」に対して学校教育は「開かれた教育」であったためといわれている。パブリック・スクールという語は米国ではそのまま「公立学校」の意味になるので注意が必要。 |
Punishment | 懲罰 | 校則違反者に与えられる。主な懲罰は以下の通り。 【通常罰】ラテン語の書き取り(50〜500行)。 【特別教室送り】半休日の午後、助教師の監督のもと特別教室で一時間書き取り。氏名は台帳に記録される。 【校長罰】礼拝の遅刻(300行)、欠席(500行)。校則違反の初犯者には軽罰(30〜50行)を与え、休日の指定時間内に持って来させる。 【体罰】校長のみが実施できる。罰を与えるかどうかは年齢や校内での地位で考慮する。体罰の対象は低学年(3年級〜レムーブ級)の生徒のみ。 主な校則違反は以下の通り。嘘、粗野な言動・行動、飲酒、喫煙、町の飲食店の出入り、町の不良との付き合い、いじめ、賭け、試験の不正等。 |
Roxonian | ロクソニアン | ロクセス校の生徒のこと。OBのことをオールド・ロクソニアンと呼ぶ。ちなみに英国の初・中等教育では「卒業」の概念がなく、卒業式も行わない。生徒たちは学び舎を去った後もロクセス校の一員なのである。 |
Second Master | 副校長 | 管理委員会によって、助教師の中の先任者から任命される。 |
Senate House | 評議員議事堂 | 1722年から1730年にかけて建設された新古典主義の建築物。キングス・コレッジとゴンヴィル&カイウス・コレッジの間、ケンブリッジの街の中心部に建てられている。評議会によるケンブリッジ大学の意思決定などが行われていた。 |
Senior Wrangler | 首席一級合格者 | ケンブリッジ大学の数理優等卒業試験の首席合格者。ケンブリッジの数学専攻および優等卒業試験は困難を極めるとされており、「英国で得られる最上の知的称号」と名高く、取得者に与えられる栄誉と尊敬は莫大なものである。試験結果の順位はタイムズ紙などにも掲載される。取得者の多くはその後数学や物理学などの分野で世界をリードする学者になっている。 |
Tripos | 優等卒業試験 | ケンブリッジ大学における卒業試験の中でも、特に優等学位立候補者の試験を指す。その名称は試験官が座っていた三本足の椅子に由来するという。この優等卒業試験を受けるには、前年の予備試験を通過していなければならない。この試験で優等を獲得することができれば、ほぼ自動的にコレッジの特別研究員に就けるとされている。 |
Tutor | 個人指導教師 | 入学から卒業まで生徒の学習上・生活上の指導をする古典教師。生徒は入学と同時に自身の個人指導教師を選ぶ。入学前に選択した寮教師が古典担当の助教師だった場合は、そのまま個人指導教師も兼任する。学校内での生徒の両親代わりとなるよう心がける。 一人の教師あたり平均6名の個人指導を受け持っており、上限は40名までと定められている。最下級生から最上級生までの生徒を担当するため、全学年の学習内容に精通している必要がある。個人指導の時間は週に1回の1時間。 |
Trinity College | トリニティ・コレッジ | ケンブリッジ大学を構成する学寮のひとつ。トリニティとは「三位一体」の意。ヘンリー8世によって1546年に創設された。ケンブリッジ大学の中で最も権威があり、また裕福とされるコレッジである。ニュートンの林檎の木があることでも有名。 長い歴史の中で数多の学者や首相を送り出してきた。有名な卒業生には詩人のバイロン、テニスン、哲学者のラッセル、物理学者のニュートン、レイリー、歴史家のマコーレーなどがいる。 |
Universal reconciliation | 万人救済主義 | キリスト教の非主流派思想のひとつ。普遍主義とも。キリスト教において主流である「信仰を持つ者が救済される」という思想に対して、「信仰の有無に拘わらず、(イエスの十字架の贖いにより)全ての人類が救済される」とする思想。万人救済主義の思想は長いキリスト教史の中で隆盛と衰退を繰り返してきたが、減少の一途を辿る傾向にある少数派である。 |
Wrangler | 一級合格者 | 数理優等卒業試験の一級合格者(ファースト・クラス)に与えられる称号。その中でも首席の者を首席一級合格者、次点を次席一級合格者と呼ぶ。 数理優等卒業試験の式典は18世紀から評議員議事堂で行われるようになり、試験官がバルコニーに立って結果を読み上げ、階下の聴衆に向けてそのコピーをばら撒き投げるのが伝統とされている。 |